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vol.110 2016.5 発行

<第110回>目線

数年前から年に数回、小中学校に行って講演をさせて頂いています。
当初、話すテーマにしていたのは「障がい者の暮らしについて」。
普段あまり接することがない体に障がいを持っている人たちが、どのように地域で生活しているのか、どのようなことに日々困っているのかを子ども達に話していました。
自分の経験談を基に基に話す内容をまとめ、いかにしたら興味を持ってもらえるかを考えながら講演に挑んでいましたが、正直うまく子ども達に伝えたいことを理解してもらうことは出来ていなかったと思います。

元々人前に出ることが苦手な性格のため、講演のお話を頂いたときはしっかりと人前で話が出来るか不安でした。
案の定、講演の現場では先生方や大勢いる子ども達の前に出た途端、体全体に緊張が走り頭が真っ白になることも。
話そうとしていた内容も忘れて、ほとんど用意していた原稿を読むだけで終わってしまうこともあったりで、そんな中時折顔を上げてみるとしーんと静まりかえった教室で、笑顔もないうつむき加減の子ども達がいました。

講演の帰りはだいたい落胆と反省の繰り返しで、子ども達には申し訳ない気持ちで一杯でした。
自分には向いていないと思い、講演を断ろうと思ったこともありましたが、次こそはという気持ちで講演のお話を受けていました。
しかし、せっかく機会を頂いているのに、子ども達にとってなんの印象にも残らない講演になってはいけない。どうしたら、興味を持って聞いてもらえるだろう・・・。
ふと、自分の小中学校の時にも学校で講演が開かれていたのを思い出しました。

正直、講演というと話が長いし内容が難しく分かりづらいという印象ばかりで、どんな話だったのかも覚えていません。
でも、それを考えると、自分の講演もそんな感じなのではないかと思いました。
ただ原稿を見ながら大人の言葉で自分の経験談を話す。そんな話を聞いても、子ども達にとったらつまんないし意味も分からない。当然、印象に残ることもない。
そんな状況を作り出した原因は自分であり、自分が子ども達に目線を合わせていなかったからだと気づきました。

自分自身車椅子に乗っていることにより周りの人を見上げることがよくありますが、会話するときは目線を合わせています。
もちろん、相手にしゃがんでもらって目線を合わせているというわけではありません。
目線を合わせるというのは自分を理解してもらうための意識・心構え的なものです。
以前は引っ込み思案で何事にも遠慮してものを言えなかった自分ですが、昔と比べるとだいぶ自分のことを伝えることが出来るようになりました。それは、ヘルパーさんとの自立生活で培われたものだと思います。

ヘルパーさんに何かをお願いするのであれば、言葉などにして伝えないといけません。又、遠慮して下手に言ったり横柄に上から目線で言ってしまっては、自分のことを理解しようとしてくれているヘルパーさんの気持ちを阻害してしまうことにもなります。
どのような言葉・姿勢で話したら相手に上手く伝わるのか、それを意識することが目線を合わせることだと思っています。そうすることで、相手にも自分に目線を合わせてもらえるようになり、理解し合うことに繋がっていくのではないかと思います。

講演の時の僕は、ただ一方的に時間内に話をすることばかりを考え、子ども達に目線を合わせず、本当の意味で相手に伝えると言うことを疎かにしていたと思います。 その後は、どうすれば話を聞いてもらい興味を持ってもらえるかを色々考えました。そして、現在ではなるべく原稿を読まず相手の顔を見ながら話すのはもちろんのこと、話しだけではなく写真や動画を見てもらう、自立生活の話以外に電動車椅子サッカーの話をしたり体験をしてもらうなど、今までよりも子ども達が飽きずに興味を持ってもらえる講演を考えるようになりました。

もしかしたら、子ども達にとっては特に以前と変わらないと思うのかもしれませんが、以前よりは子ども達の笑顔がある講演になってきたように思います。
講演の時、相手の反応があるとほっとします。
これからも、子ども達に笑顔になってもらえるような講演を行っていけたらと思っています。<TA>



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