パーソナルアシスタント町田
vol.127 2017.10 発行

<第127回> 「下手」だと言われる

皆様お久しぶりです。
今月コラムを担当させていただきます三井です。

今月は私を含めて身体障がい者にとっては欠かせないリハビリについて実体験を含めて書かせていただきます。

私は受傷して、一通りの訓練を終えて退院してからもリハビリをするために月に一度通院をしています。通院している理由の一つに「下手」だといわれるということがあります。
 私はリハビリする度に必ずといってよい程、リハビリを担当している療法士に車椅子からベッドへの乗り移りを確認され、「下手」だといわれます。

 一見他の人から見れば、車椅子からベッドの乗り移りなど、移乗ができることが重要であって、上手下手などさほど重要ではないのではないかと思われるかもしれません。
しかし、下手だといわれる事には実は大きな意義があります。まずは、どういう部分が下手になっているのかといいますと、重心を乗せる場所であったり、足の置き場所、腕のロックの仕方、お尻の上げ方などです。いままで正しい移乗の仕方を教えてもらえなかったわけではありません。受傷した後のいわゆる急性期で、しっかり移乗の仕方を教えてもらい、正しいフォームを身に着けています。一度は理想のフォームを教えてもらったはずなのに、なぜ退院後に下手だといわれてしまうのでしょうか。

その答えは日常の中にあります。時間に割と余裕がある入院中に比べて日常生活は忙しい時間の中で移乗の質よりも移乗の速さや回数を重要視するようになってしまい、ついつい足の置き場などを気にせず、汚いフォームで移乗をするようになってしまいます。私も思い当たる節が多々あります。そして、日常生活の中で汚いフォームで移乗をしていることに慣れてしまっていることを自分自身で気付くことは私自身の経験上まずありません。
では、汚いフォームで移乗をすることでどのような悪い事が起こるのでしょうか。
まずは、単純に落車の危険性が増すことです。そしてもう一つが未来の移乗に及ぼす影響です。汚いフォームでの移乗は若さが与えてくれている筋力が成り立たせてくれている事にすぎません。今後歳を重ねて筋力が衰えていけば力任せの移乗はできなくなってしまいます。ここで「下手」だと言われる意義が出てきます。
 自分では気付きにくい忙しい日常生活の中で身についた汚いフォームでの移乗を下手だと指摘、修正してくれることが将来より長く自分自身で移乗ができることにつながっていくということになるのです。
 実際にご高齢の方の移乗をじっくりと見させていただいたのですが、筋力がない分、移乗にスピード感がなく、移乗を終えるまでに時間を要していたものの、移乗そのものは腕のロックは外れず、安定した重心で、お尻も十分な高さまで上がり、とても綺麗なフォームをしていました。実際に私が見た方だけがきれいなフォームをしているのではなく、全体的な傾向として筋力のないご高齢の方や、女性の方が力だけに頼らず、体に負担もかけない綺麗なフォームで移乗をするそうです。私も移乗の練習をする際にはご高齢の方の移乗を参考にするようにとよく言われていました。

 リハビリというと訓練を重ね、日常生活に復帰するまでがリハビリというイメージがありがちですが、日常生活に復帰した後だからこそ必要なリハビリもたくさんあると思います。今回私の実体験をふまえて移乗の事を例にしてあげましたが、様々な部分で退院後のリハビリの必要性があると感じます。具体例を挙げると車椅子の座り方ひとつとってもリハビリの必要性があります。日常生活の中で癖になりがちな車椅子の座り方を指摘してもらえるだけで褥瘡リスクを軽減できたり、腰痛予防に役立てたりできます。

  忙しい日常生活の中でなかなか定期的にリハビリに行けないという方も多いかと思いますが、もう自分にはリハビリが必要ないと決めつけずに、少しでも時間を作ってリハビリに行かれてはいかがでしょうか。やはり、日常生活の中での体の変化や動作の変化については自分だけでは気付けない部分が数多くあると思います。私が毎回移乗が「下手」だと言われ続けられるように、指摘されることがとても重要な意味を持つのではないでしょうか。

またもや若干当事者向けのコラムになってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
また次回も温かい目で読んでいただけたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。(三井)



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