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PAM通信モバイル版

コラム

vol.59 2012.2 発行

<第59回>3者は対等

今回のコラムは、障害当事者が運営する介助派遣事業所の現状を概観することから始めます。

障害当事者の運営する介助派遣事業所の多くは「当事者が自分の生活を自己選択し自己決定することが正しい」との理念を掲げています。この考え方はPAMの理念でも重要な要素の1つです。しかし、この考えかたには“良い面”と“悪い面”が強力にあると思えます。その良い面である「障害があっても自分の生活は自分で選択・決定し主体的に生きる」との考え方は、障害当事者の業界の普遍的な価値観であるとも言えます。

それでは悪い面とは何でしょうか?介助派遣の現場に当てはめて考えてみます。
ユーザー(当事者)は自分の生活を自由に選択・決定することが正しい(自分で決めるべき)とされることで、他者の意見を受け入れにくい環境ができ、そのことで成長(社会生活の技術や知識の向上)や、成長するための努力への動機付けが得にくくなってしまいます。

また、自分の生活を自分で選択・決定しなければならないユーザーは、それを上手くこなすことができる能力や人格が要求されます。そして、それが上手くできないユーザーは“自分本位”や“依存的”、“無責任”などの評価を受けてしまいがちです。一方、ヘルパーは当事者(ユーザー)に指示されないことを“してはいけない”とされることで能動的に働くことができず“指示待ち”や“受身”、さらには“無責任”となり、介助技術の向上や介助のキャリアを積み重ねることが難しくなってしまいます。

長年の勤務が技術の向上ではなく体力の衰えとしてしか評価されない環境を作ってしまっていることにもなります。さらに、事務局は“無責任”になったユーザーとヘルパーが起こすトラブルへの対処に追われ、当事者の自己選択・自己決定を掲げた理念に逆行する“管理志向”になってしまいがちです。以上が介助派遣の現場から見えてくる「自己選択・決定」の“悪い面”だと思います。

そこで、「自己選択・決定」を推奨しながらも、上記のような“悪い面”を改善するために、PAMは「スタッフの3者(ユーザー、ヘルパー、事務局)は基本的に対等な関係であり、全員が介助派遣の担い手としての役割を果たす義務を持つ(前回のコラムで紹介したPAMスタッフ心得を参照して下さい)」との立場を採用しています。

この立場を採用し、3者が対等に意見を述べ合い切磋琢磨する(意見を受け入れるか否かの決定権は意見されたスタッフが持ちます)ことで、ユーザーは社会生活の技術や知識を向上させ、介助を利用した生活がスムーズに送れるようになり、ヘルパーからの選択や決定へのサポートを受けやすくなることで社会経験の浅いユーザーも介助を使った生活が始めやすくなります。

ヘルパーは能動的に働くことで仕事に“やりがい”を持て、体力が衰えても向上した介助技術で指名雇用される人材になり、介助のキャリアを積み重ねることで高収入や社会的賞賛が期待できるようになります。事務局は問題が減り事務が効率良く行えることにより発生した余力で、スタッフの3者の待遇の向上に力を注げるようになります。

以上のように考えてPAMは“3者は対等”との立場を採用することでスタッフ全員の幸福の実現を目指しています。スタッフ個人にとって他のスタッフは最も身近な社会の構成員です。スタッフ個人の社会生活技術と知識の向上や人格の向上のためには、他のスタッフは「ただのお客さん」や「ただのサポーター」ではなく人格を持つ1人の人間であるべきなのではないでしょうか?

今回のコラムは、PAMが3者は対等との立場を採用する理由を説明させていただきました。それぞれの立場や価値観で様々な意見をもたれる方が居られると思います。忌憚のないご意見をお聞かせいただきPAMスタッフの幸福の実現にご協力ください。(TK)