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コラム

vol.62 2012.5 発行

<第62回>Powerchair Football


今月のコラムは、PAMの事務局スタッフとして活躍されているTAさんに書いてもらいました。

全国大会の決勝が終わり、会場内が大きな拍手で包まれた。
「こんなに人がいたんだ・・・」
周りを見るとチームのみんなが泣いている。
普段は泣かないような監督まで。
僕はとりあえずほっとしてユニフォームを脱いだ。

電動車椅子に乗りながら出来るサッカーって知ってる?!
当時入所していた施設の職員から声を掛けられたのが15年ぐらい前の夏。
「知りませんけど」と素っ気ない言葉を返したのを覚えている。
蒸し暑い施設の体育館で、半ば無理矢理やらされた電動車椅子サッカー(Powerchair Football)という競技。
元々サッカーが好きで、テレビでも試合とかよく見てたけど、そのサッカーとはスピードも迫力もルールも違う。最初は嫌で仕方がなかった。何が面白いの?という感じ。
電動車椅子のフットレストにボールを蹴るための専用器具を取り付けて、とりあえずボールを蹴ってみる。
ところが、ボールはあさっての方へ。ボールを追いかける、そして、また蹴る。ボールは再び意図しない方向へ。そして、ボールを追いかける。・・・まるで犬。
いらいらが募っていき、気づいたら日が暮れていた。着ていたシャツも汗でびっしょり。
いつの間にか電動車椅子サッカーにどっぷりはまる人間になっていた。

やがて練習していくうちにうまくなっていき、施設の仲間で作ったチームではエースになり、関東の代表になり全国にも名前が知られるようなり、気分は意気揚々。
そして、僕は犬から天狗に変わっていった。
周りとのレベルの差を感じるほどに苛立ち、ひどい時は周りに当たってしまう時も。
結局、もっとレベルの高いチームの選手達とプレーした方が楽しいと考え、横浜の強豪チームへ移籍を決意。
「このチームならもっと活躍できる!」
そんな甘い考えでいた僕の鼻はぽっきりと折れることに。
簡単に言えば、選手やスタッフの電動車椅子サッカーに対する情熱、プレーのレベル、その全てが想像を遙かに上回っていた。目の前の光景に圧倒されるばかり。
そして、なにより楽しめなかった。
それはこのチームが個人技よりも連携を重視したチームだったから。

周りの選手の指示を聞いたり目を見ながら周りのために自分がどういうプレーするべきか考えたり、自分がしたいプレーのために周りがどのように動いてほしいか指示出しをしたり、そういう声掛けをしながらプレーすることで、どの選手が試合に出ても見事な連係プレーを繰り出すことが出来るチームだった。
今までスタンドプレー中心だった僕は全く違うプレースタイルを求められることになり、当然最初は四苦八苦。 まずは入ったばかりのチームで周りの選手の考えを理解するのに必死だった。
何が正解なのか分からないまま暗中模索の日々。
そんな時にある仲間から言われたのが、「おまえとプレーするとお互い意図が合ってやりやすいから楽しいよ」という言葉。嬉しくもあり本当にほっとした。
そして、いつの間にか自分も同じような気持ちでプレーしていたことに気づいた。
自分を信頼して動いてくれる、パスを出してくれる仲間がいる、身体的・精神的に自分をサポートしてくれる人がいる、だから楽しくプレーができる。
自分一人では味わえない感覚。
このチームに来て良かったと思った。

電動車椅子サッカーを始めて約15年。
ようやく掴んだ全国優勝。
鳴りやまない拍手。
泣きながら喜び合うチームのみんな。
「タケ、ありがとう」
仲間の一人が僕に言った。
いろんなことを教えてくれたこのチーム。
・・・少しは恩を返せたのかな。
とりあえずほっとしてユニフォームを脱ぐと、着ていたシャツが汗でびっしょりになっていた。(TA)

如何でしたか?実はTAさんは全国優勝チームのメンバーだけではなく、大会のMVPにもなったそうです。TAさんは仕事もプライベートも充実した時間を過しているユーザー・スタッフのロール・モデル(お手本)の1人と言えるのではないでしょうか?

PAMのコラムは、今年度から書き手が3人に増えます。古株のTKに加え、「格好いい大人」候補のTA(女性)さん、「お手本?」ユーザー・スタッフのTA(男性)さんです。それぞれが個性を活かし得意分野を担当します。是非ご期待ください!