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PAM通信モバイル版

コラム

vol.64 2012.7 発行

<第64回>被災者の見る幽霊


東日本大震災による津波で多くの方が亡くなられた地域に「幽霊」が出るとの噂が流れています。工事をする人の具合が悪くなってしまうため修復が半分で止まっているスーパーマーケットの噂や、高台に向かって殺到する「幽霊の列」の噂などです。地震や津波で亡くなられた方の幽霊の噂を耳にすると“幽霊になってしまう程つらい状況だったのだろう…”と、悲しいけれど納得が出来てしまう気もします。しかし…
噂のスーパーマーケットは浸水の被害はあっても亡くなられた方はおらず、“実際に”幽霊を見たと話す人もほとんどいないようです。やっぱり噂は噂にすぎず幽霊はいないのかもしれません…?

とは言え、多くの方が亡くなられた地域に幽霊の噂が流れるのは自然な事かもしれません。幽霊の噂は、大きな災害による恐怖体験や大切な人を亡くしてしまった喪失感に対する「現実逃避」と考えることもできるからです。これらの現実逃避は“心が壊れてしまいそうなときに発動する心理的な自己防衛システム”とも言えます。幽霊の噂話(つらさを別の形で表現)をすることは“現実を受け入れ適応していく過程”であるとも考えることができるからです。つまり、「被災者の見る幽霊」は事実ではないとしても“否定はできない”ということになります。

被災者とは異なったやり方ですが、PAMのユーザーやヘルパーも現実逃避を行っているのでは?と思うことがあります。例えばユーザーは、自分の介助を管理する煩わしさや、介助無しでは生きられない“束縛感”から逃れるために、介助の管理を他人に“任せて”しまったり、介助のトラブルや介助の管理が上手く行かない原因をヘルパーに押し付けるなどの現実逃避を行っていると思うことがあります。またヘルパーは、行いたくない介助(または納得のいかない介助)に自分の気持ちを封印して“無茶な要求をするユーザーの介助もヘルパーの仕事だから…”との現実逃避を行っていると思うことがあります。

被災者がつらい現実を幽霊の噂話(現実逃避)をしながら受け入れることが出来るようになっていくように、PAMのユーザーやヘルパーも現実逃避をしながら“自分の生活や仕事を”受け入れる(または、折り合いをつける)ことができるようになれるといいと思います。でも、これらの現実逃避には「落とし穴」があります。逃避を続けすぎると現実社会(普通の生活や普通の感覚)に戻って来られなくなってしまったり、現実逃避が新たなトラブルを生んでしまったり、我慢が心因性の病気を発症させてしまうこともあります。つらさに耐えられそうもない時は、現実逃避をしていいし、その場から逃げ出してもいいと私は思います。でも、現実逃避は一時的につらさを忘れさせる手段にすぎないし、その場からの逃避には新しい環境になじむ努力が必要になります。現実逃避や、その場からの逃避は、それをしなくても大丈夫な自分になるための通過点や訓練期間でありたいと思います。(TK)