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コラム vol.74 2013.5 発行

<第74回>APOカップ(vol.1)


初の海外。初の日本代表。初の国際大会。
初めてづくしの中、興奮と不安を抱えながら成田空港に向かう。
オーストラリアのシドニーで開催される第1回アジア太平洋オセアニア選手権(APOカップ)。
日本代表2チーム(TEAM・JAPAN TEAM・NIPPON)とオーストラリア代表2チーム(Australia・Gold Australia・Green)が激突し、電動車椅子サッカーのアジア・オセアニア地区No.1を決める大会。
この大会の日本代表TEAM・JAPANの選手として選ばれ、出場することになった。
電動車椅子サッカーをプレーし始めて約16年。飽き性の自分が唯一続けてきたこと。
ぼんやり生きていた人間が、夢であった日本代表のユニフォームに袖を通す。
しばらくは実感が湧かなかった。
大会に向けた日本代表の合宿にも参加。

念願の国際タイトル奪取に向けて、みんな気合いが入っていた。
チームではダントツの最年長。自分の息子とも言えるぐらい年が離れた選手もいた。
若いパワーの中に混じったおじさん一人。すぐには馴染めないかもと少し心配する。
しかし、練習や試合中に声を掛ける時のため、各選手にニックネームを付けることになり、自分のニックネームは名前から「あっちゃん」に決定。 「えっ、あっちゃん?!」と思わなくはなかったけど、みんなが笑いながら「あっちゃ~ん!」と呼んでくれたおかげで、思ってたよりも早くみんなの輪に溶け込むことが出来た気がする。調子に乗って、元AKB48前田敦子の名ゼリフにならい「僕のことが嫌いになっても~」を言おうとしたが、言わなくて良かったと今でも思う。

厳しくも充実した合宿を経て迎えた日本出発の日。
空港に向かう電車の中で、電動車椅子サッカー選手に気持ちを切り替えていく。
正午過ぎに成田空港に着くと、すでに仲間の多くが集まっていた。
みんなと談笑しているうちに、緊張していた気持ちがとりあえず和らいでいく。
フライトまであと4時間となったあたりで、乗っている電動車椅子の解体・梱包を始める。
電動車椅子は貨物扱いになるが、そのままでは搬入できないので、折りたたみの出来ない電動車椅子はコンパクトにするため肘置きや背もたれなどの部品を外して解体しなければならない。
特にコントローラーやバッテリーなど電気系統に関わる物は、ケーブルなどを全て外して電気が通らないようにしなければならず、ケーブルの中には強度の弱い物もあり、乱雑に扱い誤って断線などしてしまうと車椅子が動かないということになってしまう恐れもある。

競技用の電動車椅子は、激しいぶつかり合いに耐えられるためにガードを付けたり、安定した走りが出来るよう座面やタイヤの位置を調整したり、モーターが過熱しないようファンを付けるなど、普通の車椅子とは構造や大きさなどが異なるため、解体するだけでも一苦労。その様子はさながらF1マシンのピット作業のよう。
かなり大変な作業だったが、約1時間半掛けて何とか無事に解体・梱包が終了。
電動車椅子としばしのお別れをし、空港で用意された手動車椅子に乗り換えた自分たちは、手荷物検査・出国手続きなどを済ませ、国際空港制限エリア(免税店などがあるところ)でフライト時間まで待機することに。
その間、デジタルカメラで写真を撮ろうとしたらバッテリーが切れていたり、付けていた腕時計が壊れていて針が止まっていたりなど、いくつかのアクシデントに見舞われたものの、無事飛行機に乗り込み、日本を離陸した。

オーストラリアまでは約10時間。
オーストラリアはサマータイムシーズンなので日本との時差は1時間ほどしかなく、時差ぼけの心配はあまりない。
いいパフォーマンスを発揮するために、体調管理がいかに重要かというのは日頃から指導を受けてきた。
睡眠ももちろん体調管理に欠かせないものであり、フライト中はしっかり睡眠を取ろうとしたが、結果的にほとんど一睡も出来なかった。飛行機に乗り慣れていないため、というかちょっと飛行機が怖かったため、精神的に落ち着かなかったのかもしれない。
朝になりふと外を見てみると、南太平洋の青い海が眼下に広がっていた。

到着まであと1時間ぐらいというところで、飛行機の客室乗務員の皆さんから日本代表チームへの応援寄せ書きを頂く。心遣いが嬉しかった。
ここまで来るのに様々な方々から、感謝してもしきれないほどのご支援・ご協力、たくさんの応援の言葉を掛けて頂いた。みんなに優勝という最高の結果で応えたい。
気持ちを新たにして、オーストラリアに到着した。

・・・気温46度、シドニー観測史上最高気温を記録。
日光を浴びると肌が痛い、目から意味もなく涙が出てくる。
早速のアゥェーの洗礼だった。

オーストラリア上空写真
(飛行機から見えた景色)
APOカップのコラムはもう数回続く予定です。(TA)